
コナミグループの2026年4~6月期決算は、売上高とすべての利益項目が第1四半期として過去最高を更新しました。売上高は前年同期比33.6%増の1,295.24億円、営業利益は63.3%増の452.85億円、親会社の所有者に帰属する四半期利益は64.2%増の325.74億円です。
業績をけん引したのは、サッカーゲーム「eFootball」を中心とするデジタルエンタテインメント事業でした。6月に開催されたサッカーの世界大会に合わせたゲーム内イベントやキャンペーンが利用を押し上げ、同事業の売上高は36.5%増の1,000.83億円、事業利益は57.4%増の438.7億円に拡大しました。
注目すべきは、単にW杯でゲームが売れたことではありません。eFootballは基本プレー無料で利用者を集め、選手カードやゲーム内サービスへ継続的に課金してもらう運営型ゲームです。大型大会の盛り上がりを、広告宣伝だけで終わらせず、ゲーム内の利用頻度と課金へ変えられる構造が利益成長につながっています。
一方、W杯は4年に一度の特別要因です。大会終了後も利用者と課金額を維持できなければ、今回の伸びは一時的なものになります。さらに、デジタルエンタテインメント事業への利益集中が進むほど、主力タイトルの人気低下や運営上の問題が全社業績へ与える影響も大きくなります。
本記事では、最高益の背景、eFootballの利益構造、コナミが持つ競争優位、W杯後に確認すべき指標とリスクを整理します。
- 第1章 4~6月期決算は何が強かったのか
- 第2章 eFootballはなぜ高収益なのか
- 第3章 W杯効果は一時的か、構造変化か
- 第4章 コナミの競争優位と参入障壁
- 第5章 投資家が検索したい気になるQ&A
- 第6章 展望とリスク
- まとめ
第1章 4~6月期決算は何が強かったのか
売上高以上に利益が伸びた
2027年3月期第1四半期の売上高は1,295.24億円、事業利益は446.99億円、営業利益は452.85億円、税引前四半期利益は464.53億円、純利益は325.74億円でした。
売上高の伸び率33.6%に対し、営業利益は63.3%増えています。営業利益率は約35%となり、前年同期の約29%から大きく上昇しました。
この利益率改善は、追加販売に対する原価負担が比較的小さいデジタルコンテンツの売上が増えたことを示します。ゲームの開発や運営には人件費、サーバー費、広告費が必要ですが、完成したデジタル商品を追加で提供する際、製造業のように同じ割合で材料費や物流費が増えるわけではありません。
利用者数と課金が一定水準を超えると、売上増加分の多くが利益へ残りやすくなります。今回の決算は、コナミのデジタル事業が持つ営業倍率の高さを示したといえます。
デジタルエンタテインメントが全社利益の中心
デジタルエンタテインメント事業の売上高は1,000.83億円、事業利益は438.7億円でした。事業利益率は約43.8%です。
同事業の売上高は全社売上高の約77%を占め、事業利益は連結事業利益とほぼ同規模です。他の事業や本社費用を考慮すると、コナミの利益の大部分をデジタルエンタテインメントが生み出している構造が分かります。
アーケードゲーム事業は売上高43.12億円、事業利益9.29億円、ゲーミング&システム事業は売上高123.88億円、事業利益8.27億円、スポーツ事業は売上高127.12億円、事業利益7.64億円でした。
ゲーミング&システムやスポーツも増益でしたが、全社業績を動かした主因は明確にデジタルエンタテインメントです。
通期予想は据え置き
会社は2027年3月期の通期予想を据え置きました。売上高5,050億円、事業利益1,500億円、営業利益1,430億円、純利益1,010億円を計画しています。
第1四半期の純利益進捗率は約32%です。単純な4分の1を上回っていますが、ゲーム会社の業績は発売時期、イベント、広告費、開発費によって四半期ごとの変動が大きくなります。
W杯効果を含む好決算だけで、直ちに通期予想の上方修正を織り込むのは慎重であるべきです。今後は大会後のeFootballの動向と、下期に予定される新作の販売状況が重要になります。
第2章 eFootballはなぜ高収益なのか
パッケージ販売から継続課金へ
従来の家庭用ゲームは、完成したソフトを発売時に販売し、その売上を中心に開発費を回収する方式が一般的でした。新作の発売直後に売上が集中し、その後は徐々に減少します。
eFootballは基本プレー無料で提供し、継続的な更新、選手獲得、イベントなどを通じて収益を得る運営型です。家庭用ゲーム機、パソコン、モバイルへ展開しており、世界累計ダウンロード数は10億を突破しています。
無料で参加できるため利用者の入口を広くし、その一部が長期間遊び、ゲーム内で支出する構造です。毎年ソフトを買い直してもらう方式よりも、利用者との接点を維持しやすくなります。
現実のサッカー大会が販売促進になる
スポーツゲームの強みは、現実の試合や大会が継続的に話題を生むことです。
W杯では代表選手、国別対戦、試合結果、スター選手の活躍が世界中で注目されます。コナミは、この盛り上がりに合わせて特別なキャンペーンやゲーム内イベントを展開しました。
通常のゲームでは、利用者の関心を維持するために独自の物語や新要素を作り続ける必要があります。サッカーゲームでは、現実のシーズン、大会、移籍、選手の活躍そのものが新しい利用動機になります。
ただし、現実の大会を活用するには、選手、クラブ、リーグなどのライセンスが重要です。競合ゲームとの契約競争が激しくなれば、費用上昇や収録内容の差が課題になります。
モバイルと家庭用をまたぐ利用基盤
eFootballは複数の端末へ展開しています。2026年6月にはNintendo Switch 2向けの「eFootball Kick-Off!」も発売しました。
モバイルは利用者を広く獲得しやすく、家庭用ゲーム機やパソコンは操作性や映像表現を重視する利用者へ届きます。複数の端末を持つことで、国や年齢、利用環境の違いを吸収できます。
一方、端末ごとの操作性、通信環境、課金方法が異なるため、すべての利用者へ同じ満足度を提供するのは簡単ではありません。更新による不具合や対戦環境の悪化は、利用離れへ直結します。
https://kabutan.jp/stock/chart?code=9766
第3章 W杯効果は一時的か、構造変化か
大会後に残る利用者が重要
W杯期間中は、普段ゲームをしない層もサッカーへ関心を持ちます。この新規利用者が大会終了後もゲームを続ければ、W杯は長期顧客を獲得する機会になります。
反対に、イベント期間だけ利用し、その後離脱する人が多ければ、売上は次の四半期以降に減速します。
投資家が確認したいのは、ダウンロード数だけではありません。月間利用者数、継続率、課金利用者数、一人当たり課金額、イベント後の利用頻度です。ただし、コナミはこれらを詳細には開示していません。
そのため、次回以降のデジタルエンタテインメント事業の売上高と利益率から、W杯後も勢いが続いているかを読み取る必要があります。
収益の季節変動を小さくできるか
運営型ゲームの強みは、年間を通じて収益を得られることです。しかし実際には、大型イベント、人気選手の登場、記念キャンペーンなどに課金が集中することがあります。
W杯後も各国リーグ、クラブ大会、移籍市場、FIFAe World Cupなどの催しを組み合わせ、利用者の関心を維持できるかが重要です。
コナミが現実のサッカー日程に合わせて安定的にイベントを運営できれば、4年に一度の大会依存ではなく、年間を通じた収益基盤になります。
遊戯王や野球ゲームも利益を支える
デジタルエンタテインメント事業の好調は、eFootballだけで説明できるものではありません。
「プロ野球スピリッツA」「実況パワフルプロ野球」「eBaseball: MLB PRO SPIRIT」「遊戯王カードゲーム」なども展開しています。スポーツ、カード、家庭用ゲームという異なる分野に有力な知的財産を持つため、一つの作品が弱い時期を別の作品で補える可能性があります。
さらに、「メタルギア」「サイレントヒル」「桃太郎電鉄」「ボンバーマン」「悪魔城ドラキュラ」など、長期間支持されてきた作品群があります。
eFootballの好調を他の作品開発へ再投資し、複数の継続収益源を育てられるかが、中長期の利益成長を左右します。
第4章 コナミの競争優位と参入障壁
長年蓄積した有力IP
ゲーム市場では、新しい作品を開発するだけでなく、利用者に知ってもらうための広告費が必要です。知名度の高い作品は、発売やイベントを告知した時点で多くの利用者へ届きます。
コナミは、サッカー、野球、カードゲーム、アクション、ホラーなど、異なる顧客層へ届く複数のIPを保有しています。
過去作品を最新機種向けに再構築したり、モバイルゲームへ展開したり、カード、映像、eスポーツへ広げたりできることが強みです。
運営データの蓄積
運営型ゲームでは、どのイベントで利用者が増えたか、どの選手や商品が選ばれたか、どの時点で利用をやめたかというデータが蓄積されます。
このデータを使って、イベント内容、価格、報酬、対戦環境を改善できます。長期間運営するほど、利用者の行動を理解するための情報が増えます。
競合企業が新しいサッカーゲームを開発しても、10億ダウンロード規模の利用基盤と過去の運営データを短期間で再現するのは困難です。
弱点は高い利益集中
競争優位が強い一方、利益がデジタルエンタテインメントへ集中している点は見落とせません。
主力ゲームで大規模な不具合、課金設計への反発、ライセンス喪失、利用者離れが起きれば、全社利益への影響は大きくなります。
ゲーム内課金を巡る各国の規制もリスクです。選手獲得などに偶然性を含む販売方式が規制対象となれば、商品設計の変更が必要になる可能性があります。
以下は、ゲームの利用場面をイメージしたフィクションです。
大学生の亮は、W杯の日本代表戦を見た翌日、久しぶりにeFootballを起動しました。大会に合わせたイベントで代表選手を集め、友人とオンライン対戦を始めます。
最初は大会期間だけ遊ぶつもりでした。しかし、毎週更新されるイベントや好きなクラブの選手をきっかけに、W杯終了後もログインを続けました。
コナミにとって重要なのは、大会中に一度遊んでもらうことだけではありません。亮のような利用者を、日常的にゲームへ戻る長期顧客へ変えられるかです。
第5章 投資家が検索したい気になるQ&A
投資家が検索しそうな疑問に、元上場企業広報の視点でお答えします。
Q1 純利益6割増はW杯だけの効果ですか
W杯に合わせたeFootballの施策は大きな要因ですが、全社業績はそれだけではありません。野球ゲーム、遊戯王、ゲーミング&システム、スポーツ事業も増収または増益となりました。
ただし、利益増加の中心がデジタルエンタテインメントであることは明確です。次の四半期で同事業の伸びが鈍化するかが、W杯効果の大きさを判断する材料になります。
Q2 eFootballの強みはダウンロード数ですか
10億ダウンロードは大きな利用基盤を示しますが、累計数だけでは現在の収益力を測れません。
重要なのは、現在も遊ぶ利用者の数、利用継続率、課金率、一人当たり課金額です。公開情報では詳細が明らかではないため、セグメント売上高と利益率を継続的に確認する必要があります。
Q3 次の決算で何を確認すべきですか
最優先は、デジタルエンタテインメント事業の売上高と事業利益率です。W杯終了後も高い水準を維持できれば、利用者の定着が進んでいる可能性があります。
加えて、新作の販売動向、開発費、広告宣伝費、eFootballの大型更新、世界大会、遊戯王や野球ゲームの動向を確認したいところです。
第6章 展望とリスク
強気シナリオ
W杯で獲得した新規利用者が大会後も残り、eFootballの課金と利用が高水準を維持するシナリオです。
継続的なイベント、eスポーツ、複数端末への展開によって収益が安定し、デジタルエンタテインメントの高い利益率が続きます。さらに、過去の有力IPを再始動し、eFootball以外の大型収益源が増えれば、全社利益は一段と安定します。
標準シナリオ
W杯後にeFootballの勢いは一部鈍化するものの、既存利用者と他の主力作品が業績を支えるシナリオです。
第1四半期ほどの高成長は続かなくても、通期計画に沿って過去最高水準の利益を維持できれば、運営型ゲームの収益基盤は強いと評価できます。
期待が崩れる条件
- W杯終了後にeFootballの利用者と課金が急減する
- 大型更新の不具合や対戦環境への不満が利用離れを招く
- 選手やリーグのライセンス費が上昇する
- 競合サッカーゲームへ利用者が移る
- ゲーム内課金に対する規制が強化される
- 新作の開発遅延や販売不振が発生する
- デジタル事業への利益集中が高まり、業績変動が大きくなる
- 為替変動や海外規制が世界展開の収益を圧迫する
今後確認したいKPI
- デジタルエンタテインメント事業の売上高
- 同事業の事業利益率
- eFootballの累計ダウンロード数と更新頻度
- W杯後のイベント継続状況
- 家庭用、パソコン、モバイルの展開状況
- 新作タイトルの販売本数
- 開発費と広告宣伝費
- 営業キャッシュ・フロー
- 通期純利益1,010億円に対する進捗
まとめ
- コナミグループの4~6月期は、売上高1,295.24億円、営業利益452.85億円、純利益325.74億円となり、第1四半期の過去最高を更新しました。
- eFootballを中心とするデジタルエンタテインメント事業が、高い利益率で全社業績をけん引しました。
- 今後の焦点は、W杯で獲得した利用者が大会後も残り、継続課金と高い利益率を維持できるかです。
今回の最高益は、W杯という大きな外部材料を、自社ゲームの利用と課金へ取り込んだ成果です。コナミは、現実のスポーツイベントとデジタルコンテンツを結び付ける収益構造を築いています。
一方、4年に一度の大会だけで成長は続きません。eFootballの日常的な利用を維持し、遊戯王、野球ゲーム、メタルギア、サイレントヒルなど複数のIPへ利益源を広げられるかが重要です。
投資家が次に見るべきなのは、10億ダウンロードという大きな数字だけではありません。W杯後の売上高、利益率、利用者の定着、新作への再投資が、継続的な最高益へつながるかです。
参考資料
あくまで個人的な見解であり、投資を勧めるものではありません。投資は自己責任で行ってください。
最近Xを始めたのでフォロー頂けますと嬉しいです。
https://x.com/IGoldeneggs
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